今月の主題 免疫反応と臓器疾患
免疫機構と応答
抗原とは何か
多田隈 卓史
1
1慶応義塾大学医学部・微生物学
pp.794-795
発行日 1985年5月10日
Published Date 1985/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219737
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免疫学の分野では,とくに意識なく抗原という言葉を日頃用いているので,抗原とは何かと改めて訊かれるといささかの戸惑いを覚える.もともと抗原(anti-gen, Ag)(anti, against:-gen, producing)は抗体産生を促す物質として用いられたが,現在ではより広義に解釈され,すでに成立した免疫反応とも作用しうる性質も含めて,次のような物質と定義しうる.(1)生体内こ投与されたとき,特異的に結合する抗体を産生させたり,特異的に反応しうるTリンパ球を生ぜしめる,あるいは逆に免疫学的トレランスを成立させうる物質で,かつ②産生された抗体あるいは感作リンパ球と特異的に反応し,沈降反応や遅延型アレルギーなどを引き起こしうる物質.なお,抗原の前者の性質を免疫原性(immunogenicity),後者の性質を反応原性と呼ぶことがある.
一般に抗原は免疫原性と反応原性の両方の性質を備えており,完全抗原と呼ばれる.しかし,それ自身免疫原性を欠くが,産生された抗体とは反応しうる抗原も存在し,これがハプテンといわれる(表1).ハプテンはさらに抗体との沈降反応などから,直接にその存在を検出しうる複合ハプテンと,沈降反応などを阻止しうる能力があることから,間接的に抗原の存在を検出しうる(ハプテン阻止試験,表2)単純ハプテンに分けうる.
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