入門講座 血清
抗原
松橋 直
1
1東大血清学
pp.140
発行日 1967年2月15日
Published Date 1967/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917107
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麻疹や耳下腺炎にかかると,その患者には免疫が成立し,その血液中には抗体がつくり出されることを前回にのべたが,この麻疹や耳下腺炎の病原体のように,ある生体に免疫を成立させたり,抗体をつくりだされるきっかけをあたえるものを「抗原」とよぶ。こう考えてくると,身近に例はいくらでもあろう。たとえばインフルエンザビールス,チフス,コレラ菌などのような抗原体はすべて抗原とよんでよいことになる。
腸チフスやコレラにかかったとき床に,患者血清とチフス菌,コレラ菌などを混ぜあわせてどの病原菌と反応がおこるかを調べ,診断の助けにしようとする血清診断法でわかるように,抗体をつくりだすきっかけをあたえた病原体は,試験管内においてその抗体と反応し何らかの形の目にみえる現象をひきおこすことができる。すると,抗原は免疫を成立させ,抗体をつくり出すきっかけをあたえるばかりでなく,試験管の中でその抗体とだけ撰択的に反応する性質があることがわかる。
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