今月の主題 下痢と腸疾患
下痢の病態生理
下痢の分類
松枝 啓
1
Kei Matsueda
1
1国立病院医療センター・消化器内科
pp.1352-1355
発行日 1984年8月10日
Published Date 1984/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219156
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下痢は,1日の糞便中の水分量が200ml以上(または,糞便の重量が200g/day以上)と定義されている.事実,正常人では大量の水分摂取や上部消化管への分泌にもかかわらず,1日の糞便量は150g以下であり,その水分量も150 ml以下である.すなわち,正常人では図1で示すごとく,食事の摂取による約2lの液体と上部消化管からの分泌液約7lの計9lが腸管内液として近位消化管内に存在するが,その90%以上が腸管より再呼吸され,糞便として排泄される量はわずか0.1〜0.2l/dayである.この再呼吸は空腸回腸そして結腸で起こるが,実際には空腸から3〜5l,回腸から2〜4l,そして結腸から1〜2lの液体が再吸収されて体循環に入りenterosystemic cycleを形成することにより,細胞外液の12〜20lを保持している.正常人では,このようなenterosystemic cycleにより1日の糞便量が200ml以下にコントロールされているが,この機構の破綻により,糞便中の水分が増加して下痢が発生する.
このenterosystemic cycleの破綻を起こす原因として,理論的には5つの機序が考えられる.
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