臨時増刊特集 問題となるケースの治療のポイント
XII.癌
癌の合併症の対策
240.癌転移による上大静脈症候群の対策
三島 好雄
1
Yoshio Mishima
1
1東京医科歯科大学・第2外科
pp.2638-2639
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218781
- 有料閲覧
- 文献概要
症例
53歳男子.縦隔洞への悪性腫瘍転移による上大静脈症候群で,主訴は軽度の呼吸困難,胸壁の皮静脈拡張と眼瞼浮腫(図1).やがて顔面・上肢のチアノーゼ,頭部・頚部・上肢にも著しい皮静脈拡張をみるようになり,さらに進行すると頭痛・めまいなど脳のうっ血症状を示すようになる.この皮静脈拡張は仰臥位でもっとも著明であるが,起立しても消失することはない.このために患者は好んで坐位あるいは半坐位をとる.症状は上半身を前屈したり,体を動かすことによって増悪する.また,閉塞が急性に発生すると顔面・肩・上肢などに浮腫をみることがあり,多くの場合脳循環不全による神経症状を伴う.
静脈造影検査では,閉塞が末梢小範囲の場合には奇静脈を介して右心房にまで造影剤が達するが,広範囲に及ぶ場合には上大静脈のみならず,左右の腕頭静脈,鎖骨下静脈も閉塞され,胸壁を介する著明な側副血行路が造影される(図2).閉塞の部位と範囲を確定することは常に必ずしも容易ではないが,造影剤が上大静脈に流入せず,頚部・胸壁の小静脈が側副血行として拡張している像をみとめれば診断は確定する.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.