臨時増刊特集 問題となるケースの治療のポイント
XI.免疫・アレルギー・膠原病
薬物療法のポイント
215.胃障害のある患者に対する非ステロイド性抗炎症薬の投与法
柏崎 禎夫
1
Sadao Kashiwazaki
1
1北里大学医学部・内科
pp.2576-2577
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218756
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非ステロイド性抗炎症薬(非ス薬)は抗炎症のみならず,解熱,鎮痛の作用も有するため,その適応は各種の炎症性疾患から発熱や疼痛を呈する病態まで,広範囲に及ぶ.最近では抗血栓薬,抗蛋白尿薬などとしても使われ始め,適応はますます拡大し,非ス薬は今や日常診療で最も頻繁に処方される薬物の1つになっている.非ス薬は酸性と塩基性(ないしは非酸性)薬物に分類されるが,後者には抗炎症作用はほとんどなく,非ス薬といえば,もっぱら前者を指していると考えてよい.
さて,このように広く使われている非ス薬の使用上の最大の難点は,いずれの薬剤も副作用として食欲不振,悪心,嘔吐,胸やけ,胃痛,胃重感などの胃障害を大なり小なりもっていることである.非ス薬の作用機序を考えれば,かかる副作用の出現は不可避的といってもよいだろう.すなわち,非ス薬はサイクロオキシゲナーゼ活性を阻害することによりプロスタグランヂン(PG)生合成を抑制する.したがって,胃壁でのPGの合成も当然抑制されるために胃粘膜障害が起こるわけである.非ス薬の胃障害を起こす機序はもちろんPG生合成の抑制だけによるものではなく,薬物そのもの,あるいはその代謝産物による粘膜局所の直接障害も無視できない.問題は,日本人では非ス薬による胃障害が出現しやすいことである.急性疾患の場合にはあまり問題となることは少ないと思われるが,慢性疾患に非ス薬を長期間服薬させるときに胃障害の出現防止の対策が重要になる.
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