臨時増刊特集 問題となるケースの治療のポイント
I.感染症
抗生物質の的確な使用
6.S-T合剤
北原 光夫
1,2
Mitsuo Kitahara
1,2
1東京都済生会中央病院・内科
2慶応義塾大学医学部・内科
pp.2076-2077
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218547
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S-T(Sulfamethoxazole-Trimethoprim)合剤は抗菌物質であって,sulfa剤とtrimethoprimの一定の組み合わせは,明らかにいずれかの1剤よりも抗菌力は優れている.S-T合剤は細菌の菌体内でおこなわれる葉酸合成阻害剤であり,sulfa剤はパラアミノベンゾイック酸とプテリジンの合成過程を阻止し,かつジヒドロ葉酸からテトラヒドロ葉酸への過程をtrimethoprimが阻害する(図).人間の細胞ではこの葉酸合成の経路をもっていないので,S-T合剤を服用している間は葉酸欠乏状態になることはまずありえない.
S-T合剤は80mgのtrimethoprimと400mgのsulfamethoxazoleを混ぜあわせた化学療法剤であり,trimethoprimとsulfamethoxazoleの比は1対5となっており,この比がもっとも優れた相乗作用を感受性菌に対して示すといわれる.S-T合剤を経口的に投与すると,急速に腸管から吸収されて,血中最高濃度はtrimethoprimでは1.0μg/ml,sulfaは20μg/mlとなる.治療的濃度は髄液中,前眼房水中,中耳滲出液中,下気道分泌液中に十分得られる.
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