今月の主題 臨床医のための神経内科学
注目されている疾患
色素異常,剛毛,浮腫,免疫グロブリン異常などを伴う慢性多発ニューロパチー
佐野 元規
1
,
塚越 廣
1
Motoki Sano
1
,
Hiroshi Tsukakoshi
1
1東京医科歯科大学・神経内科
pp.1296-1297
発行日 1983年8月10日
Published Date 1983/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218381
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1968年深瀬ら1)は,孤在性形質細胞腫を有する36歳女性例で全身の著明な色素沈着,多発ニューロパチー,浮腫,剛毛,糖尿病,無月経などの臨床症状を呈し,血清M蛋白成分を認めた症例を報告した.この症例は腹腔内の鶏卵大の孤在性形質細胞腫を摘出後,M蛋白は消失し諸症状は寛解したが,その後再発し多発ニューロパチー,色素沈着,浮腫,脱水症が進行し,約7年の経過で死亡した.
さらに臨床的に類似の症状を呈する2症例が岩下ら,鵜沢らにより報告され,1974年高月らは2)多発ニューロパチーおよび内分泌症状を伴うplasma cell dyscrasiaは1つの症候群として把握すべきものであると提唱した.その後,主に本邦を中心として類似の症例報告が相次ぎ,外国からの同様の症例報告も見られるようになり3),特異な症候群を形成すると考えられている.井形らはわが国の報告例の症候中最も頻度の高いものをとってPigmentation,Edema,Polyneuropathy(PEP)症候群と仮称した.現在未だ統一的な名称はない.
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