臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
X.腎疾患
良性腎硬化症 VS 慢性腎盂腎炎
今井 潤
1
,
阿部 圭志
2
Yutaka IMAI
1
,
Keishi ABE
2
1東北大学医学部・第2内科
2東北大学医学部・内科
pp.2074-2075
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216882
- 有料閲覧
- 文献概要
なぜ鑑別が問題となるか
良性本態性高血圧症に伴う腎の病理学的変化を良性腎硬化症と呼ぶ.腎が長期にわたって高血圧症の影響を受けると,究極的に腎は両側性に萎縮する.一方,慢性腎盂腎炎では腎の特徴的な萎縮を伴い,約60〜70%で高血圧症を有するといわれる.高血圧症を伴わない慢性腎盂腎炎,また片側性の腎盂腎炎では,当然良性本態性高血圧症(良性腎硬化症)との鑑別は問題とならない.明らかな腎萎縮を伴った良性本態性高血圧症と高血圧症を伴った両側性の慢性腎盂腎炎の鑑別が問題といえよう.
とはいえ,この両者を分離することは必ずしも容易でない.慢性腎盂腎炎とは,腎盂・腎杯系に対する遷延化した細菌感染症ないしはその治癒像と定義される.したがって慢性腎盂腎炎の診断には,尿路感染症の既往が重要な意味をもつが,実際には多くの例で,その既往を証明することはできない.さて,慢性腎盂腎炎に伴う高血圧症は,古腎の機能組織の減少の結果と一般的には考えられているが,これに対して高血圧症の存在が,慢性腎盂腎炎の重要な発生素因であるとの主張も根強く,慢性腎盂腎炎に伴った高血圧症と本態性高血圧症の分離は必ずしも容易でない.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.