今月の主題 肺の炎症性疾患—最近の動向
その他
びまん性間質性肺炎
吉良 枝郎
1
,
荒木 高明
1
Shiro KIRA
1
,
Takaaki ARAKI
1
1自治医科大学・内科
pp.374-376
発行日 1980年3月10日
Published Date 1980/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216445
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
炎症としての病理像
本症は厚生省特定疾患の1つに指定されており,近年注目を集めている原因不明の疾病である1).
山中2)による本症の特徴的病理像を表1に示した.病理学総論的にいえば炎症とは,①循環障害-透過性亢進,②細胞成分の浸出 ③組織の変質,④組織増殖の形態像で特色づけられるが,有害な刺激が加わり組織障害,これに対する一連の防御,修復反応が起こる過程である.刺激としては微生物,化学的物質その他多彩な原因がありうる.これらの病理学的過程と本症の病理像とを対応させると,①としては肺間質の水腫,肺胞壁に沿った硝子膜の形成,②としては好中球は目立たないが単球,組織球,リンパ球,大食細胞の浸出 ③としては肺胞の虚脱,呼吸細気管支の拡張(bronchioloectasis),これらの組み合わせによる蜂窩肺の形成,④としては肺胞隔壁など間質に線維化がみられ,本症は原因は不明であるが有害な刺激が肺の間質局所に加わり,発生した炎症としてとらえることができる.しかも肺胞腔を主な場とする肺炎球菌などによる細菌性肺炎とは異なり,本症では前述の特色をもつ炎症が,びまん性に肺の間質に進展する特色がある.この種の病変が進展すると終末像として肺の線維化が間質を中心に発生してくるため,同意語的に肺線維症という名称も使用される.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.