臨時増刊特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第2集
I.尿検査
9.尿アセトン体
斎藤 正行
1
1北里大臨床病理
pp.1642-1643
発行日 1979年10月20日
Published Date 1979/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216113
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陽性を示す場合
ケトン体(別名アセトン体)とはアセト酢酸,アセトン,βオキシ酪酸の総称で,これらのうち生体内で一次的に生成されるのはアセト酢酸である.アセト酢酸が組織内で脱水素酵素で還元されてβ-オキシ酪酸になり,アセト酢酸が非酵素的に脱炭酸されるとアセトンに変わる.一般にケトン尿中ではアセト酢酸の3倍以上のβ-オキシ酪酸が存在するが,両者はほぼ平行して変動するので,検出容易なアセト酢酸が臨床的には対象となる.ケトン体は強酸で,血中で予備アルカリと強く結合することから,過去においてはケトン体というとアチドージスや代謝異常の元凶と考えられていた.しかし,もともとアセト酢酸は脂肪酸の生体内酸化の正常中間産物で,常時体内,とくに肝において脂肪酸からアセトアセチルCoAを経て生合成され,筋肉その他の組織に運ばれてエネルギー源の一部として役立っている.たとえば心筋はエネルギーの50%を脂肪酸,つまりアセト酢酸にあおいでいる.ところが,表のごとく,なんらかの機転で糖質の供給が不足,または糖質の酸化に故障が生じ(利用障害),TCA回路の回転が流れなくなると,生体はエネルギー供給源を脂肪に求めるようになり,肝でのアセト酢酸の合成は亢進し,一方,末梢組織での利用障害が展開すると,つまり分解の速度が肝における生成の速度に劣るようになるとケトン体は血中に異常増量し,腎排泄閾は低いことから尿中にすぐ排泄されるようになる.
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