紫煙考
タバコを喫わない病院—防衛医大付属病院の全院禁煙制
加納 保之
1
1防衛医大
pp.1552-1553
発行日 1979年10月10日
Published Date 1979/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216091
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いささか長いまえおき
今日,文明国と目されている国なら,美術館や劇場など多数の人が集まるところで喫煙を放任しているようなことはあり得ないでしょう.そういう時代に病院内で勝手気ままにタバコを喫うことを禁止したことがなぜ話題になるのか,いささか訝しく思われるのですが,編集子からのわざわざのご要望であるからには,それ相当の理由があることであろうと思って,前病院長として筆を弄する次第です.
そうは申しましても実のところ,1年半ほど前,開院に先立って院内禁煙を決断するときは,それ相当の勇気を必要としたことが思い出されます.と申しますのは,今になっては何でもないことなのですが,その当時はタバコの煙の医学的意義など知る由もない外来者や,仕事の合い間の一服を楽しんできた職員が,とりきめを守れるという確信を持てなかったからです.しかしただ今では,案ずるよりは生むが易いということわざを実感するとともに,合理的な行動規制には大衆は従うものであること,大衆を集めたときは合理的な行動規制の指示をなすべきであることを実際に感得しました次第です.
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