今月の主題 内科医に必要な精神科の知識
今日の精神科治療
風祭 元
1
1帝京大精神科
pp.1306-1307
発行日 1979年9月10日
Published Date 1979/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216027
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はじめに
精神科における治療というと,少し年輩の一般医の方なら,インシュリン・ショックや持続睡眠療法などのいわゆる特殊療法を,また若い年代の医師なら種々の向精神薬を用いた薬物療法や,精神分析療法などを思い浮かべるのではないかと思う.これらはいずれも,精神科医以外の医師にとっては,やや特殊で異質のものと感じられているのではないだろうか.医師やその家族が,たとえば胃潰瘍や虫垂炎のような病気に罹って医療をうけるときには,病院でおよそどのような治療処置が行われるかを予測することができようが,ひとたび精神科で診療をうけることになった際に,具体的にどのような治療が行われるかを頭の中に描き出せる人はそれほど多くないであろう.
しかし,精神科も医学の一分科である以上,治療の方法は原則的には他の診療科と同一であると考えてよい.とくに慢性疾患の治療についていえば,現在志向されている精神科の治療の体系は,狭義の身体的医療を加えるだけでなく,社会生活の中での病気の治療を目指しているという点で,他科において,将来あるべき医療の理想の姿を先取りしているとさえいえるのではないかと思う.精神科で今日行われている医療は,決して特殊なものでなく,これを理解することによって,他科の医師にとっても,自己の医療者としての幅をさらに広げるのに役立ち得るであろう.
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