今月の主題 胃癌とその周辺
胃癌の治療
胃癌の予後
三輪 潔
1
1群馬県立がんセンター東毛病院
pp.716-717
発行日 1979年5月10日
Published Date 1979/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215885
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「胃癌が癒ることがある.それは誤診をした場合で,胃癌ではなかったときである」といって学生を笑わせた某大学の偉い教授がいたという.明治時代の話らしいが,1881年(明治14年)Billrothが胃癌の手術に成功し,明治30年には近藤次繁先生が44歳の女の人の胃癌の切除を日本ではじめて成功させて以来,先人の大きな努力によって胃癌が不治の病ではないことが実証され,昭和8年(1933年)には三宅速先生が104例の5年生存例を報告するまでになった.そのなかには手術後24年の健在例2例を含んでいて価値の高い論文であったが,当時の5年生存率は根治切除例の13.8%に過ぎなかった.しかも根治手術の直接死亡率は22.1%という高値が報告されているが,この論文のなかに「根治の目的を達せし我諸例中の大部分は比較的初期癌にして鏡検上癌は粘膜及至粘膜下組織内に限局せるか若くは漸く筋層を侵す程度の浸潤にして」と述べ,早期診断の方向を打ち出している.さらに昭和12年の佐伯の報告になると,粘膜下層までにとどまる胃癌の5年生存率は91%であったという今日と変わらない治療成績が記されている.
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