今月の主題 胃癌とその周辺
胃癌の生化学
胃癌と胃液
和田 武雄
1
1札幌医大・第1内科
pp.667-669
発行日 1979年5月10日
Published Date 1979/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215869
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はじめに
胃癌の際に胃液分泌がどのような変化を示すかについてはすでに19世紀前半ころから注目されてきたが,少なくともこれまで報告されてきた大多数の研究は今日いうところの進行癌についてのものであって,早期胃癌,ないしは微小胃癌についての変化を正確に調べた発表は極めて少ない.その理由は検査の方法がわずらわしい割合に成果を期待させるものが少ないと考えられるからである.むろん胃液の変化を塩酸酸度とペプシン活性の測定結果のみから論ずるとすれば,萎縮性胃炎の進行に伴う異常性のほうがむしろはっきりしている.しかし,胃癌の生化学的変化を考えるときには,胃液分析はなお魅力的な研究対象としての意義を失っていない.胃液分泌をみることが胃の固有機能を直接的に調べるモノサシの一つである上,胃癌の発生する素地にはなにか生化学的・生理学的異常があってしかるべき,とする考え方があるからで,そのような変化をとらえるための鋭敏で,機微の異常についても検出できるモノサシを求める研究は近年なお胃癌の発生母地を追究する研究と平行して地味に続けられている.これまでの一般的な成績と一緒に,そのような多少は基礎的にわたる研究途上の問題を含めて紹介しよう.
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