職業病の知識
呼吸器障害—肺癌
瀬良 好澄
1
,
信友 浩一
2
1国立療養所近畿中央病院
2国立療養所近畿中央病院内科
pp.608-609
発行日 1979年4月10日
Published Date 1979/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215854
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はじめに
わが国の臨床家が,常に癌を職業(発癌物質への職業性曝露)と関連させて因果関係を検討することはほとんど不可能であると思い,また,ほとんどの肺癌例は職業と無関係である,と思い込むのはやむをえない点がある.なぜなら,現在の臨床家は,医学生時代あるいは研修時代に職歴(狭義の外因子曝露歴)の問診を系統的かつ具体的に行う習慣がつかず,えてしてつけたりだけの病歴情報源であったことが一因であろう.また,そのような系統的にはとれていない職歴情報では,「職業性」肺癌の実数は不正確極まりないものとなる.この推測は,職業性肺癌の報告例数を諸外国とわが国とで比較した表1)があるが,一見してわが国の職業性肺癌の把握状態がきわめて不十分である事実から裏付けられよう.
以上のように,少なからぬ不正確な数字を基にした上での印象を臨床家がもちつづけることは,患者にとっても予防医学にとっても不幸なことである.これらの問題を解決するため,当院においては図1のような外因子曝露歴調査票を用い(患者記入)一助としている.
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