天地敢人
ペニス
人
pp.909
発行日 1978年6月10日
Published Date 1978/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207927
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相変わらず新聞紙上で過激派の内ゲバが伝えられている.このようなニュースを見聞するたびに私は動物園の檻の中でお互いに争っている原猿類のことが思い出される.原猿類,たとえばキツネザルなどは,ヒトと同じように霊長類に分類されているが,生活に好適な場所があり余るほどある環境でも,わざわざ集まって内ゲバを行い,オスとメスの間にさえ敵対関係がみられるということだ.それで種族維持が可能なのであろうか.これに関連して京都大学名誉教授の宮地伝三郎氏は大変興味ある意見を述べられている.同類の動物についてみると,愛情の発達が悪いほど,ペニスの構造が複雑になっており,これが種族維持のために重要な意味があるという説である.
原猿類のペニスにはトゲが密生し,しかもその先端がペニスの基部に向かっており,膣への挿入は容易であるが,勃起している間はなかなか引き抜くのが不可能らしいということである.原猿類では愛情も乏しく,メスの合意が不十分なままで性交が行われるため,性器にひっかかりが必要だというのである.それが,真猿類になるにつれてペニスの外形もだんだん単純になり,オランウータンではほとんど人類と同じようになっている.真猿類では愛情の表現も豊かになり,性交中親愛的でさえあるから性器にひっかかりを必要とせず,ペニスの表面からトゲが消えたのであろう.
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