今月の主題 知っておきたい骨・関節疾患の診かた
腰背部を中心に
ぎっくり腰
宮地 直恒
1
,
星野 孝
1
1獨協医大整形外科
pp.2290-2292
発行日 1977年12月10日
Published Date 1977/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207663
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はじめに
整形外科の外来を訪れる患者の中に,「ぎっくり腰」と呼ばれ,不用意にかがみこんで重いものをもち上げたり,身体をねじったはずみに,突然「ぎくっ」と激しい痛みが腰臀部に走り,そのまま立てなくなってしまったり,あるいはそうでなくても,中には翌日になってということもあるが,とにかくほうほうの態で腰を「く」の字に曲げ,痛みで顔までしかめっ面で来院する者が,相も変わらず多いものである(図1).これが「ぎっくり腰」とか「ぎっくらせんき」と呼ばれるものである.
古来,人間が腰痛を感じるようになって以来,「ぎっくり腰」は人類の悩みの種となって,洋の東西を問わず人々の間に恐れられてきた.ドイツ語では,ヘクセンシュス(魔女の一撃)と言われるくらいに,その痛みは容易ならぬものである.さらにまた,ただの一瞬の「ぎくっ」としたことが発展して,椎間板ヘルニアになってしまう場合も多く,一部には「ぎっくり腰」と言わずに「ヘルニア」とか「Slipped Disk」と呼んで,あたかも不治の病か何かにかかったように,一種の恐怖感をもつように呼ばれることもある.医学の進んだ今日でも,この「ぎっくり腰」は,減少するどころか,一定の生活を強いられた結果,腰背部の筋肉を強化する機会がなくなったためであろうか,むしろ現代の壮年層の共通の悩みとなって,ほとんどの者が何らかの形で経験するほどに多くなっている.
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