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徐脈頻脈症候群で初発し,約1年7カ月後急性白血病様の経過をとり急死した悪性細網細胞症と考えられる例で,剖検にて洞結節を含む右房心外膜に腫瘍細胞の浸潤を認めた例を経験した.
患者は45歳男性で,46年9月某病院で十二指腸潰瘍の治療を受け,その時の心電図は正常洞調律であった.47年4月,数分聞のAdarns-Stokes発作をきたし,以後不整を伴った脈拍数40程度の徐脈を自覚している.同年8月精査目的で本院へ入院した.心電図は洞房ブロックを基調とした房室解離で,時折心室捕捉を伴っていた.胸部X線写真は心肥大を示したが,心カテーテル検査,心血管造影に異常なく,一般理学的検査,一般血液検査,諸種肝機能検査,血清学的検査,尿糞便検査も正常で,原発性心筋症あるいは洞結節機能不全症候群と考え,経過を観察したが心電図所見に変化なく,48年1月退院した.以後外来通院にて経過を観察したが,徐脈性不整脈を呈し,時折発作性心房粗動を認めたが,ジギタリス剤でコントロールした.また血液検査にもなんら変化を認めなかったが,48年10月頃より,全身の体表リンパ節の腫大と右胸水を認めた.胸水は漏出液で,リンパ節生検では,実質は濾胞の過形成を示すのみであったが,被膜に細網系由来と考えるられ異型細胞の浸潤があった.βメサゾンの投与で12月にはリンパ節腫大,胸水とも消失した.その期間中赤血球数,白血球数ともまったく正常であったが,血小板数10〜12万に減少し,血液像ではリンパ球が43%と上昇した.以後49年2月まで自覚的にも,血液検査成績などにても変化なく外来通院を続けたが,2月末頃突然発熱および右胸水を認め入院した.赤血球数470万,白血球数5,900,血小板数3.8万で,血液像には病的細胞は認めなかったが,リンパ球67%であった.他の血液検査でも,CRP陽性化,LDH 1,860 U/mlと上昇し,骨髄穿刺はdry tapであった.急性白血病様変化と考え,βメサゾン,抗生剤を投与したが,3病日より出血傾向を認め,7病日にはTh 7以下の横断性脊髄麻痺を呈した.以後出血傾向増強し41病日に死亡した.死亡まで白血球数は6,000〜7,000で,血液像では50〜60%のリンパ球を認め,末期に1〜2%の異型細胞を認めた.
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