臨時増刊特集 診断基準とその使い方
III.消化管疾患
食道静脈瘤—重症度分類を中心に
常岡 健二
1
,
瀬底 正彦
1
,
浜中 捷彦
1
1日本医大第3内科
pp.1776-1780
発行日 1977年12月5日
Published Date 1977/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207507
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
概念
食道下部の粘膜下には豊富な静脈網が疎な結合組織で支持されている.そのため,この食道粘膜下静脈叢は血流うっ滞が起こりやすく,さらに胸腔内陰圧も加わって,これが粘膜面に膨隆して静脈瘤を生ずる.血流うっ滞をきたす原因には門脈高血圧症,上大静脈圧の上昇および局所循環障害があるが,出血などと関連して臨床的に問題となるのは門脈循環障害の結果,左胃静脈,短胃静脈を経て食道粘膜下静脈叢に静脈瘤を形成して上大静脈に流入する側副路によるものである.
食道静脈瘤は,破綻出血が致命的となることも多く,消化管出血では最も重篤なものである.上部消化管出血に占める食道静脈瘤の割合は,2〜30%以上までと報告者による差が大きいが,5%前後とするものが多く,食道静脈瘤出血の頻度は少なくない.食道静脈瘤を併発する疾患も数多いが,遭偶する機会の最も多いのは肝硬変に生じたものである.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.