今月の主題 高血圧の問題点と最近の治療
高血圧の治療
外科的療法—腎血管性高血圧症
上野 明
1
1東大胸部外科
pp.1412-1413
発行日 1977年10月10日
Published Date 1977/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207406
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外科治療の意義
腎血管性高血圧症に対する概念は人により多少のニュアンスの差はあっても,大よそのところ,レニン・アンジオテンシン依存性の高血圧であることに異論は少ないと思われる.すなわち,腎動脈に狭窄があって,その腎よりのレニン分泌の充進がみられる高血圧を指している.この高血圧に対しては,最近,β遮断剤によるレニン活性値の低下とともに血圧の正常化,あるいはアンジオテンシンⅡ拮抗剤による同じ血圧下降を期待する薬物の登場があり,当初と異なり,いわゆる効果ある薬物治療の道が開かれている.しかし,本高血圧に薬物治療を施行するのは次の2つの点を度外視するわけにゆかない.
第1に腎動脈に狭窄があってレニン分泌充進が起こるのはいわば自然の反応であって,これをβ遮断剤で抑制して血圧を下降させることは狭窄末梢の圧をさらに下降させることになり,終局的にはその腎の荒廃をもたらす可能性のある点である.実際には,腎動脈狭窄側の腎の生検では数数の阻血性変化が見出されており,時には急性の主幹動脈の血栓性閉塞が経験されている.高血圧には腎内動脈はきわめて敏感であるので,薬剤治療は対側腎の高血圧による影響を回避することはできるであろうが,これはおそらく狭窄腎の機能をあえて犠牲とすることから成り立つ治療である.何よりも狭窄が両側である場合,本治療は疑問と考えざるをえない.
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