天地人
医師国家試験
地
pp.1193
発行日 1977年8月10日
Published Date 1977/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207335
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昨年あたりから医師国家試験がにわかにマスコミの話題を呼ぶようになった.いわゆる新設医大からも受験生が送り出され,合格率が良ければ国試予備校,悪ければ医科中学と痛罵されている.それにしても今春の国試合格率は77.4%と,近年にない低いものでいろいろと考えさせられる.新設医大5校を除いても,合格率は78.1%でその成績はきわめて不良である.本年の新卒者は医学部ブームの時代に進学しており,国公立の大学には偏差値の高い秀才達が実力のみで選ばれたはずである.それにもかかわらず,新卒でも国立87.1%,公立80.8%の合格率とはどういうことであろうか.
日本医事新報(No. 2769)の"お茶の水だより"によると,厚生省の担当課長は,「試験問題は妥当であり,問題の難しさより,学生の質,医学教育の内容に思いをいたさなければならない……」と言っているとのことである.しかし,国公立医学部の新卒者の合格率の落ちこみは,やはり出題が難しくなっていることを物語っていると考える.いや単に難しいだけではなく,専門的にみても妥当とは思われない問題も含まれている.医師国家試験は医師法第9条により「臨床上必要な医学および公衆衛生に関して,医師として具有すべき知識および技能についてこれを行う」とされている.この法文をどのように理解し,出題するかが毎回の試験委員の苦労するところであろう.問題が妥当かどうかということは,その範囲やレベルをどこに設定するかということで大いに異なってくる.
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