今月の主題 腹痛の診かた・とらえかた
腹痛の検査法
超音波診断
室井 龍夫
1,2
1自衛隊中央病院外科
2北里大臨床病理
pp.958-961
発行日 1977年7月10日
Published Date 1977/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207272
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
超音波診断はnon-invasiveな診断法として最近注目を浴びている.装置さえあればベッドサイドでも手軽に行い得,かつ患者に何らの侵襲をも与えない.腹痛に伴い触診で腹部に抵抗や腫瘤を触れた場合,これが膿瘍なのか腫瘍なのか,または腫大した胆嚢なのか,その性質の鑑別に困惑するような場合こそこの診断法の得意とするところである.また腹腔内にfree airが出ているか,また腹水なり浸出液が出ているか否か,Douglas窩に膿瘍を認めるか否か,これらに対する診断も比較的容易である.しかし,内腔に空気を含む消化管に対してはまったく無力で,空気の表面で超音波は多重反射をきたし,直ちに減衰し,それ以上深部へは到達しない.したがって,腸管の背後に存在する病変に対してもまた無力である.イレウスや消化管穿孔など消化管に由来する腹痛の診断には当然レントゲンにその主役の席をゆずるが,このような場合にも腹腔内のfree airとか浸出液とかの随伴する所見を確認することは可能である.しかし,今日,このような目的で繁用されているとは限らない.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.