ここにも医療あり
語らぬ「むくろ」に聞く話—警察医23年
松野 清
pp.922-923
発行日 1977年6月10日
Published Date 1977/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207262
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医師法第21条
第1例 駅前の女子寮で,未婚の31歳の女工さんが,押入れの中で出産し,血だらけになって倒れているという連絡が110番に入った.ピーポー・ピーポーと救急車が女子寮に向かい,母子を乗せてK産婦人科医院に運ばれた.K先生は後産を処理し,母は順調に経過したが,嬰児は死産として埋葬された.○○署の刑事がK医院を訪ねて,先日の母子のことをうかがいたいという.ここで刑事に医師法第21条を持ち出された.この嬰児は「死体又は妊娠四月以上の死産児」である,したがって「二十四時間以内に所轄署に届け出なければならない」.「異常」とは,死産児自体の外,四囲の状況から判断されたい.
第2例 C病院に救急車がきて,母子の薬物中毒患者が運ばれた.M院長はその家族からすでに連絡があって,直ちに診療・治療をした.母の救命には成功したが,子供は死亡した.子供には死亡診断書を書いて埋葬した,○○署の刑事がM院長に面会を求めてきた.「死体をみた場合は届けなければなるまいが,この場合は生きていたし,その後死亡したので死亡診断書で埋葬した.」
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