今月の主題 めまいの基礎と臨床
「めまい」に関する解剖と生理
前庭系・視覚系の病態生理
福田 精
1
1岐阜大耳鼻咽喉科
pp.650-653
発行日 1977年5月10日
Published Date 1977/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207181
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はじめに 「めまい」の主題について,編集部のはじめの依頼"前庭系の病態生理"に対して,筆者は"前庭系・視覚系の病態生理"と視覚系の3字を加えて執筆するよう返事した.病態生理の観点から視覚系の「めまい」が確実にあることを記し,この認識を基いとして,「めまい」に関する研究は,日本において独特の進歩をなしていることを紹介したいからである.
第8脳神経は聴神経あるいは第8対神経と呼ばれる.蝸牛神経と前庭神経よりなり,前者は蝸牛を末梢器として聴覚を司どり,後者は前庭器(前庭三半規管,あるいは前庭迷路)を末梢器として身体平衡に与る.前庭性の「めまい」が,すなわちこの前庭神経の末梢から脳幹にある前庭核およびその走行のいずこかに病変があれば,「めまい」が発来することは周知のことである.末梢の前庭器に水腫hydropsが起こるとメニエール病,また聴神経に腫瘍ができると難聴と「めまい」が発来し,脳幹の前庭核に血流障害をきたすワレンベルヒ症候群では「めまい」が主症状であるがごときで,小脳疾患にしばしば発来する「めまい」も,前庭神経および前庭核と小脳は発生上,一部は前庭小脳と呼ばれるほど密接な関連があるゆえに,やはり前庭系に発来する「めまい」と考えられていて異論はない.
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