私の失敗例・忘れられない患者
"原点"を忘れぬことの大切さ
渡辺 亮
pp.583
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206539
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最近の診断技術の向上はめざましいが,一面,私ども一般医の所へ来院する患者の80%が,問診,触.打・聴・視診で確診でき,したがって,いわゆる理学的検査の重要性や問診のむずかしさは,現代でも少しも低下していないのではないかと思う.たとえば次の例だが…….
55歳の会社員,晩婚のため,12歳の中学生の男子1人があり,87歳の老母,53歳の妻と4名の家族暮し.定年退職後,子会社に移ったが,会社が倒産し,再び転職を余儀なくされた.再転職後,激しい心身の過労が続き,不規則な食生活,睡眠不足のため,胃痛の出没,便秘,胸やけ,下痢などが続いた.大学病院内科で胃腸レントゲンの精査を受け,さらに神経科に転科後,神経症として投薬を受けているうち,便秘,身体のふらつき,左下腹膨満感が出現してきた.この時点で,一般医である私の所に相談に来院した.
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