図解病態のしくみ 循環器シリーズ・2
大動脈弁逆流
博 定
1
1前田橋医院
pp.858-859
発行日 1975年4月10日
Published Date 1975/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206016
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大動脈閉鎖不全症(aortic insufficiency;A. I.)には成因を異にするいろいろな型があり,それぞれ発病の過程,大動脈逆流(aortic regurgitation)の程度,病態生理のしくみ,および予後の面でかなりの相違を示す.そこで臨床家としては本症を明確に理解するために,A. I. を慢性型と急性型の2群に分けて考え,治療法の選択にあやまちのないように努める必要がある,まず慢性型は全例の95%を占め,中でも圧倒的に多いのはリウマチ性(65%)であるが,梅毒性,高血圧性,動脈硬化性,結合織変性(老人型-杉浦),先天性(多くはVSDを合併),あるいは大動脈炎症候群,Reiter症候群,強直性脊椎炎に随伴するものなどすべて慢性型に入れてよい.一方急性型は細菌性心内膜炎に併発するものを筆頭とし,外傷性,解離性大動脈瘤,バルサルバ洞の破裂などによるものがあり,全体の5%を占めるが,その病態生理と予後は極めて特異かつ劇的である.
急性型のA. I. は臨床像が極めて重篤で治療も緊急弁置換術などの外科的方法によらなければ救命しえない場合が多い.この理由は①逆流量が異常に大きいこと—破局的な弁組織ないし弁輪の崩壊による,②大量の逆流をきたした直後の段階では,患者心に血行動態の急激な変化(acute volume overload)に対応する代償機転(心肥大ないし拡大)ができ上がっていないからである.
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