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異常値を示す疾患
免疫globulin(以下Igsと略す.IgD,IgEを除く)の血清濃度に異常をきたす疾患を表1にまとめて示した.血清Igs値上昇の多くの場合はpolyclonalである.polyclonalな増加は一般にIgG,IgAおよびIgMのすべてのクラスのIgsの増加として観察されるが,ときに1つのクラスのIgsのみが優先して増加する場合もある.たとえば,急性肝炎ではIgMの増加のみがみられ,IgGやIgAの増加は伴わない.ところが肝炎が遷延し,慢性肝炎(とくに活動型),肝硬変症に移行するとIgGおよびIgAの幅広い増加が起こる.このIgAの増加はcellulose-acetate膜電気泳動像でみられるβ-γ bridgingの原因である。アルコール性肝障害,消化管や呼吸器の慢性感染症ではIgAの増加,新生児の子宮内感染症,trypanosorniasis,胆汁性肝硬変症などではIgMの増加,SLEなどではIgGの増加が著明である.PolyclonalなIgsの増加の証明は疾患の診断に直接結びつくとはかぎらないが,一方,monoclonalなIgs(M-成分)の増加の証明はかなりの診断的意義をもつ.しかし増加しているIgsがmonoclonanであるかどうかは定量するだけでは決定し難く,後述するごとき各種の検索をまたなければならない.悪性のM-成分は2g/dl以上の場合が多く,またM-成分以外のIgsは著明に低下している.良性のM-成分を悪性のものと鑑別することは必ずしも容易ではないが,M-成分は1〜2g/dl程度である.しかも,この場合のM-成分は経過中に消失したり,減少したりすることがある.またM-成分以外の正常Igsの濃度に大きな変化はない.
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