緊急時の薬剤投与
高血圧性脳症のときの降圧剤の使い方
花園 直人
1
,
井上 元二
2
1鳥取大第1内科
2鳥取大薬剤部薬品情報室
pp.228-229
発行日 1975年2月10日
Published Date 1975/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205791
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高血圧性脳症は拡張期血圧の急性・亜急性上昇によって,脳細動脈の攣縮,脳血流の減少さらに血管壁透過性の亢進をきたし,脳機能障害を呈する症候群である.本症は本態性高血圧症,とくに悪性化した症例,急性・慢性腎炎などの各種の腎性高血圧症,妊娠中毒症(子癇)などから発症することが多い.そのほか褐色細胞腫,クッシング症候群などでもまれにみられるが,大動脈弁閉鎖不全のように拡張期血圧の低い疾患で本症をみることはない.髄液圧の亢進,脳浮腫の程度によって,頭痛,悪心,嘔吐などから次第に進行し,見当識障害,昏迷状態を呈し,重篤な場合にはてんかん様痙攣発作や昏睡などをみる.拡張期血圧は多くの場合130mmHg以上に上昇するが,それ以下の血圧で発症する例もあり,とくに小児や妊婦あるいは心不全例では,拡張期血圧の上昇が著明でない場合がある.
高血圧性脳症は血圧,とくに拡張期血圧を下げることによって急速に改善される.降圧治療は急を要するので,降圧剤は原則として非経口的に投与し,症状の改善が得られたのちに経口的投与に切り替える.降圧目標は拡張期血圧100mmHg程度とする.しかし本症ではすでに重篤な脳,心とくに腎障害を合併していることが少なくなく,急激かつ過度の降圧はこれらの臓器障害をさらに悪化させることがあるので,降圧による影響を慎重にチェックする必要がある.
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