小児の処置
吸入療法
渡辺 悌吉
1
,
石原 祐
1
1東京逓信病院・小児科
pp.1206-1207
発行日 1974年9月10日
Published Date 1974/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205581
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吸入療法の適応と目的
小児科領域における吸入療法の主な対象は気道の炎症性疾患(急性気道感染症)あるいはアレルギー性疾患(とくに喘息)である.これらの疾患の際には,気道粘膜の充血,浮腫,分泌物(湊)の貯留あるいは気管支平滑筋の収縮によって咳嗽刺激や気道狭窄症状(呼吸困難)が出現する.とくに小児では,発熱,過呼吸,水分摂取不良などで容易に脱水をきたし,気道粘膜の乾燥,分泌物の粘稠化による喀痰排出困難を起こしやすい.また吸気の加湿の大部分は鼻腔で行われるため,鼻閉などにより経鼻呼吸が遮げられると,気道粘膜の乾燥は一段とひどくなる.
吸入療法の目的は①気道に湿気を与えること(humidification)および②各種薬剤をエロゾルとして吸入させ,病変部の気道粘膜へ直接作用させることによって炎症の緩和,分泌物の液化による喀痰の喀出の促進,あるいは気管支拡張をはかり,症状を改善することにある.気道粘膜の薬剤吸収能は極めて早いため,エロゾル化した薬剤を病変部位に直接吸入沈着させ,迅速でしかも全身的副作用の少ない局所療法的効果は吸入療法の重要な一面であるが,Bakerらは粘膜の腫脹や滲出物で狭窄ないし閉塞状態にある病変部位にエロゾル粒子が到達し得るかどうかは疑問で,多くの薬剤は気道粘膜から吸収されて全身的に作用することも吸入療法の有効な理由であるとしている.
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