図解病態のしくみ
神経5.脊髄障害
本多 虔夫
1
1横浜市民病院内科
pp.676-677
発行日 1974年5月10日
Published Date 1974/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205436
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脊髄は中枢神経系に属するものではあるが,頭蓋外に位置するという点で「脳」とは別個に扱われることが多い.しかし基本的にその形態および機能は,「脳」と異なるものではなく,灰白質と白質から成り,前者は脊髄反射などの「中枢」として働いており,後者は各種の刺激を伝える伝導路として機能している.すぐ上に続いている脳幹と多くの点で類似しているのは当然であるが,灰白質と白質はより明瞭に区分されており,前者はH型をなし中心にかたまり,後者は周囲でそれをとり囲むように配列されている.このような構造の中で,臨床的にとくに重要なのは前角,側索,後索である.
脊髄前角 脊髄前角には末梢神経内の運動線維の起源をなす大きな神経細胞が存在する.反対側の大脳半球から出た錐体路はこれら細胞に終わり,それによって伝えられた刺激はここから末梢運動ニューロンによって筋肉まで伝えられるわけで,これらの細胞は運動に関する重要な中断点をなしている.また腱が叩打された時に起こる刺激は末梢神経内の上行性線維により直接前角細胞に伝えられ,ここから運動線維により筋肉へ伝えられ,反射運動を起こす.したがって各腱反射には前角細胞が介在するので,その存在する脊髄節をその腱反射の中枢と呼ぶ.これら細胞の障害によっては運動麻痺(弛緩性),腱反射消失が起こり,さらに著明な筋萎縮,線維束性攣縮を伴うのが特長である.
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