今月の主題 酸・塩基平衡異常—その日常臨床とのつながり
診断
ベッドサイドにおける酸・塩基平衡異常のみかた
越川 昭三
1
1東医歯大・第2内科
pp.156-157
発行日 1974年2月10日
Published Date 1974/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205289
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電解質代謝との関係
酸塩基平衡異常の臨床を考える場合,最も強調したいことは,酸塩基平衡は電解質代謝の一部だということである.あたりまえのことだと思われるかもしれないが,現実に行なわれていることは必ずしもそうではない.電解質測定と酸塩基平衡の測定が全然別の日に行なわれて,そのデータを用いて,病状を検討するということが日常行なわれているのがその証拠である.血清のNaとClを別の日に測定して患者の電解質代謝を論ずるようなことがあれば誰しも不当と感ずるが,電解質と酸塩基平衡を別々に測定してもあまり問題にされていない.
酸塩基平衡は電解質代謝の一部であり,HイオンもHCO3イオンも他の電解質と常に相関をもって動いている以上,両者の測定は常に同時に行なわれるべき性質のものである.にもかかわらずそれが分離してしまったのには,次の理由が考えられる.まず血液ガス測定は動脈血を用いることである.採血法が異なること,ここに第1の理由がある.次に測定する装置が異なる.しかも電解質測定は早くから普及し,一方pHメーターの普及はかなり遅れた.このため電解質代謝を論ずるのに,pHやHCO3なしにNaやKだけで論ずる習慣ができてしまった.これが第2の理由である.第3に,酸塩基平衡測定は「血液ガス測定」と呼称され,あたかも呼吸機能検査の一部かのごとく扱われていることにも大きな原因がある.
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