特集 これだけは知っておきたい治療のポイント
X 腎・泌尿器
1.腎炎とその周辺
慢性腎炎患者の生活指導
古川 俊之
1
,
加藤 俊夫
1
1阪大第1内科
pp.1934-1936
発行日 1973年11月20日
Published Date 1973/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205170
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労働量(安静度)の基準
慢性糸球体腎炎には適確な治療法がなく,日常の生活指導が重要な対策となる.生活指導の中でも,基本的な問題は労働量,すなわち安静度の決定である.しかし,慢性に経過する腎炎の場合,障害の程度によってどれくらいまでの労働量が許されるか,確実な根拠はまだない.したがって,それぞれの専門家が自分の経験をもとに便宜的な安静度基準を考案しているが,筆者らは厚生省の結核安静度表を参考として腎疾患安静度を作成し,患者に手渡している(表2).この安静度表の利点は,すべての安静度の等級が記載されているので,患者や家族が自分の安静度を他のそれと比較して,理解を深くすることができる点である.なお安静度の決定は病型と腎機能を目安にしているが,この欄は患者にみせないよう別表にしてある(表1).
安静の効果については,このような安静度基準と予後との関係を今後充分調査研究することによって定量的に明らかにせねばならないが,少なくとも安静は患者の自由を束縛し,社会生活や収入に好ましからぬ影響を与えることであるから,不必要な安静は絶対避くべきである.しかし,腎疾患の場合には腎血流量が立位で減少し,運動負荷ではさらに減少することがわかっており,病変の存する限り,可及的安静が望ましい.また腎疾患には痛みや発熱のように患者自ら安静を守ろうとさせる動機がなく,前尿毒症期の患者が仕事に戻らせるよう要求することすらあるので,医師の都合からいうと安静の効用をいささか強調しておくこともやむをえない.
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