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一般臨床家のための臨床免疫学入門書
免疫学のように研究の展開が急速な分野では単行本が出版された時点ですでに訂正あるいは追加すべき事項が続出してくるのは当然である.本書は初版が1969年で今回は1972年の第2版であるが,やはりその感は免れ得ない.しかし,もともと本書は疾患の解釈に免疫学の知見がいかに必要かを一般臨床家に伝えることを目的として書かれており,その点ではたしかによくまとまっている,著者は英国の病理学者で,いままでも総説的な論文を多く書いてし)るので多岐に亘ってよく消化されている,17章のうちはじめの4章が基礎的事項であり,あとは臨床であるが,内容はあくまでドグマを排しながら啓蒙的であり,臨床研修医にほぼレベルが合う.もちろん細かい検査法や統計的な数字などは皆無に等しく,米国での類似の啓蒙書にくらべて図や表の数も少なく記述的である.
免疫不全,異常免疫グロブリン症,自己免疫の概念,免疫抑制剤,移殖,結合組織病,各種の臓器組織に特有な疾患,免疫血液学,癌と免疫などきわめて多岐に亘る内容であるが,最後に臨床免疫学者の役割という章があって今なお免疫学的検査の大部分がルーチンよりも研究途上の段階にあること,臨床免疫専門家の養成が必要なことを強調している.個々の項目を読めば古い点もあるが,分担執筆の書にはない一貫性があることは明らかで,それは入門書としては大切なことと思う.各章に代表的文献および単行書が紹介されている.したがって臨床家がこれを個々の疾患についての直接の参考にするのではなく通読して免疫学的解釈を体得するのに適していると思われる.現在臨床的にも重視されつつあるT細胞,B細胞の性質(ヒッジ血球ロゼット形成や表面免疫グロブリンの有無など)については全くふれられていないように,現在のトピックスあるいは動向を求めるものには不向きである.
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