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副甲状腺ホルモン(PTH)
副甲状腺ホルモン(PTH)は副甲状腺より分泌される唯一のホルモンで,骨からのCa動員,腎でのCa再吸収増大,腸管からのCa吸収促進等の作用を通して,主として,生体内のカルシウム代謝を司るホルモンとして意義づけられる.物質的には84個のアミノ酸より成るポリペプチドとされ,特にウシPTHを中心に化学的な面,すなわち構造と作用の関連,抗原性等多くのことが明らかにされている.近年Bersonら1)によりglandular PTHとcirculating PTHが免疫学的にheterogeneityを示すという示唆がなされ,PTHの生合成と分泌に関する伝統的概念を改めて考え直させる発端を生んだが,その結果多くの実験を通して,PTHの免疫学的多様性,すなわち副甲状腺の中で作られ,血中に分泌され,代謝されていく一連の複雑な過程が明らかにされつつある.ここではPTH生合成と代謝に関する最近の考え方を記したい.
図1に,これまでに明らかにされている事実を基にしてPTH合成→代謝の過程を,Schemaにして挙げる.PTHが副甲状腺の中で合成される際には,1-84個のアミノ酸よりなるポリペプチドよりさらに大きい分子(PTH precursor)として合成され,これが1-84個のアミノ酸よりなるPTHに分解されて血中に分泌されることはほぼ確実なようである.この際PTH-precursor→PTHへの変換は副甲腺組織抽出液中に見られるある種のプロテアーゼによって成されるらしい,このプロテアーゼはCa依存性を示し,このことから血中,細胞内のCa濃度が,PrecursorからのPTHの産生をコントロールしている機序が考えられる.一方,Pottsら2)は合成ペプタイドを用いて,副甲状腺ホルモンおよび,そのFragmentのradioimmuno assayを行ない,また副甲状腺近傍の静脈からカニューレによって直接分泌されるホルモンを得て,腺細胞にて合成されたホルモンのほとんどが,血中にそのまま放出され,循環する過程―血中あるいは末梢組織―で小さなFragmentに代謝されることを示している.
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