グラフ
甲状腺腫のX線所見
藤本 吉秀
1
,
秋貞 雅祥
2
1東大・第二外科外来
2三井記念病院・放射線科
pp.2288-2293
発行日 1972年12月10日
Published Date 1972/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204523
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甲状腺腫を有する患者で,頸のレントゲン写真をとることは,昔からどこででも行なわれてきたことであるが,普通の撮影では,気管の圧迫や狭窄がわかり,粗大な石灰沈着のあるものではその陰影が写る程度で,診断に多少は役立つところがあったが,シンチグラムや超音波検査に比べるとその価値は低かった.ところが乳房撮影に準じて軟部組織X線撮影が行なわれるようになって,甲状腺疾患のなかでも癌に特有の砂粒腺小体psammoma bodiesが写るようになり,一躍診断価値が高く評価され,今日では欠かすことのできない検査法となった.
今日乳癌の診断に乳房撮影が有用であることは一般に認められており,それと同じ方法で甲状腺腫のある頸部を撮影するのであるが,甲状腺の場合には,撮影する部位の解剖学的構造の違いから腫瘤陰影,周辺の結合織の走行の乱れ,血管の拡張など軟部組織の細かいニュアンスを検出することはできない.しかし幸いなことに,甲状腺腫瘤には良性・悪性ともにかなりの高率で石灰沈着が起こり,その石灰沈着の起こり方が病変の種類によってそれぞれ特徴があるので,その面から診断の役に立てようというわけである.
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