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現代公害の特質—これからの医学にのぞむこと
東田 敏夫
1
1関西医大・公衆衛生学
pp.2094-2095
発行日 1972年11月10日
Published Date 1972/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204488
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なぜ公害先進国になったのか
「智恵子抄」の言葉をかりると,日本の産業都市には,いずこにも「空はない」.水の汚れははなはだしく,大平洋沿岸ベルト地帯の海も,河も,瀬戸内海も,琵琶湖も,すべてが「死の海」,「死の河」になろうとしています.PCB汚染は国民の食生活をおびやかしています.このようなすさまじい環境汚染・環境破壊は,世界に類をみません.日本の公害問題に対処するには,まず,なぜこのような「公害先進国」になったのか,「現代公害のしくみと特質」を正しく理解しなければなりません.
現代公害の特質は,第1に,すでにいわれているように,企業優先の「経済成長政策」によって企業公害が無秩序に拡大されたことですが,いっそう重要なことは,公害発生の因果関係が加害企業のみならず行政によってあいまいにされ,加害者責任はぼかされ,被害者泣き寝入りがまかり通っていることです.しかも,それらのばあい,ほとんど常に,官製「第三者機関」や「学界の権威」が関係しています.
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