救急診療
服毒者—毒物の見分け方と処置
牛尾 耕一
1
1東京労災病院
pp.2040-2042
発行日 1972年10月10日
Published Date 1972/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204479
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わが国の中毒死と患者数
服毒の動機には誤嚥,自殺企図および第3者の加害の3者がある.急性中毒死数と大まかな起因毒物の分類は厚生省資料から知ることができる.表1は「昭和45年人口動態統計1)」から関係項目を集めたものである.コールドパーマの臭素酸塩誤嚥による死亡は「その他の固体および液体」の項に含まれているであろう.
実際の起因物質は多岐にわたっているが,厚生省資料は死因統計であって全患者数や起因毒物の全貌は知り得ない.欧米先進国では1950年代から,中進国ではこれから遅れて始められ,すでに72ヵ国では中毒対策Poison Control Programが進められており,国際的連合も活動している.したがって年間の上記の実体は容易に把握できるようになっている.たとえば,米国では1968年,全国のPoison Control Centersに通報された中毒症例は10万5178件2),フランスでは1969年の要治療の急性中毒は5万件3)という。この面では未開発段階のわが国ではつかみようがないが,死亡5311例に平均致命率を5%として積算すると,治療対象の中毒例は年間約10万件と推定されよう.
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