新しい検査技術
リポ蛋白の電気泳動分析
桜林 郁之介
1
1日大・臨床病理
pp.1910-1912
発行日 1972年9月10日
Published Date 1972/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204454
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
リポ蛋白の分析と電気泳動法の開発
近年,脂質代謝の研究が盛んに行なわれるようになって,日常臨床検査レベルにおいても,血清脂質の測定を行なって高脂血症をきたす各種疾患の診断ならびに治療に直接役立てることができるようになった.血清脂質の測定に関しては,直接血清から脂質を分離して測定する方法と,血清中で蛋白と結合した,いわゆるリポ蛋白として測定する方法と,大きく2つに分けられる.いずれの方法にもそれぞれ特徴があり,両者を併用して行なうのが望ましい.
従来,リポ蛋白の分析には超遠心分析法が用いられてきたが,近年,電気泳動法によるリポ蛋白分画法が開発せられ,超遠心法に比較し簡便でしかも短時間で行なえて,超遠心法との相関性があることなどから日常検査として使用されるようになった.電気泳動法によるリポ蛋白分画法は,1963年Leesらが緩衝液中にアルブミンを添加しβとPreβ分画の分離を可能にした,いわゆる改良濾紙電気泳動法を開発して以来,にわかに注目されるようになった.しかもこの方法を用いて,Fredricksonらが本態性高脂血症およびその類似疾患の多数例について適切な分類を行なうに至り,その重要性はさらに高まった.しかし,この改良濾紙電気泳動法は各分画の分離が不十分であり,かつパターン認識によるものであるため定量的判定が困難である.現在では濾紙に代わる支持体として,アガロース,セルロースアセテート膜,ポリアクリルアミド,寒天などが用いられており,これらの欠点を補うべく研究されている.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.