Editorial
薬剤による白血病
大久保 滉
1
1関西医大・第1内科
pp.1563
発行日 1972年7月10日
Published Date 1972/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204385
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白血病の病因としては,放射線ビールスが考えられている.前者はヒトでも動物でも確かめられており,後者は動物ではすでに確立されているが,ヒトでもそれが原因となりうる可能性が漸次現実味を帯びてきている.動物ではそのほかに種々の薬物(3,4-Benzpyrene,Methylcholanthrene,Urethan,DMBA,Ethyleneimine,Phosphoramide,Nitrosobutylureaなど)で実験的に白血病が作られている.また,エストロジェンその他のホルモンによっても作られている.
ヒトでも薬物による白血病の発生は可能であろう.従来から,放射性物質以外に,ベンゼンおよびその誘導体,トルエン,キシレンなどに長期間曝露すると,白血病を発生する可能性があると考えられている.これらはいずれも造血組織を障害して再生不良性貧血をおこしうるものであり,一方,白血病の前段階に,動物でもヒトでも骨髄の低形成がしばしばみられること,放射線障害でも,まず再生不良性貧血がおこり,その後に白血病が現われてくることなどの事実を考え合わせると,上記の諸物質が白血病の原因となる可能性が十分に考えられる.しかし,これらの物質は,薬用としては用いられず,職業的に取り扱う人についてのみ問題となることはいうまでもない.
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