特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
IX.腎・泌尿器系
6.尿路の悪性腫瘍
膀胱腫瘍
東福寺 英之
1
1慶大泌尿器科
pp.1364-1367
発行日 1972年7月5日
Published Date 1972/7/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204314
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
既往歴について
膀胱腫瘍は尿路の腫瘍のなかでもっとも頻発し,また重要な疾患である.すでに60年以上前から化学工業のなかでも染料に関係した部門に従事する人々の間にきわめて高い頻度で発生するのが知られ,当初アニリンが原因と考えられたが1938年にHeuperなどによってbeta-naphthyla-mineが原因として考えられるようになった.これは内服しただけでなく気道から吸入されることによっても膀胱腫瘍が発生するとされている.その他にBenzidine,Xenylamine(4-aminodiphenyl)などが膀胱腫瘍の発がん物質と考えられ内服,吸入だけでなく,経皮的吸収によっても腫瘍を発生させる可能性があると報告されている.
しかし実際に臨床的に膀胱腫瘍患者の多くは発がん物質との接触が考えられず,慢性炎症などによる刺激も重要な原因的要素と考えられる.Mc-Donald(1959)は膀胱乳頭腫患者の尿抽出物をねずみの遊離した膀胱嚢内に注入し50%の頻度で乳頭状腫瘍が発生したと報告して膀胱腫瘍患者に発がん物質が存在していることを示唆している.したがって膀胱腫瘍の診断にさいし十分に患者の既往歴とくに職業歴の調査を行なう必要がある.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.