Editorial
免疫学の歴史
木村 義民
1
1日本医大・微生物学免疫学
pp.441
発行日 1972年4月10日
Published Date 1972/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204049
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免疫学の歴史はJenner(1798)による人痘予防という大胆な試みに次いで,Pasteur(1881)による炭疸病予防実験の成功が,ワクチンによる予防接種,免疫療法の端緒となった.しかしその時点においては,"免疫"の機作について解明されたわけではなく,単にその現象を認識したにすぎない.免疫体を物として把握するに至った最初は,Behring-北里(1890)による破傷風抗毒素の研究であろう.免疫体としての抗毒素についての解析,これによる治療効果の確認こそ,免疫学を体系づける先達となった.
これはやがてBordetらによる抗原抗体反応の発見となり,それに続くLandsteinerらによる免疫化学発展への道につながる.免疫化学の進歩は,抗原抗体の構造的研究,抗原抗体反応の生物物理学的アプローチという今日的課題の基礎を確立することとなったが,この間におけるHeiderberger,Haurowitz,Paulingらの免疫学創生期における功績を忘却してはならないであろう.
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