新春特集 新しい医療体系を求めて
地域医療への提言—熊本におけるひとつの試みから
小山 和作
1,2
1熊大・第2内科
2新しい医療を創る会
pp.112-114
発行日 1972年1月10日
Published Date 1972/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203980
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農村の変貌と農民の健康
九州のド真中に世界に誇る阿蘇山がある.一度たずねたことのある人はその男性的な雄大さに心を奪われることであろう.麓野に拡がる広大な平原には,放牧の牛がのどかに牧歌の調べをかなでている.下って西の方,有明海に浮ぶ大小の島々,歴史のロマンを秘めた天草がある.南に下って,口本三大急流の一つといわれる球磨川の流れを逆上れば旧相良藩の人吉があり,さらに奥に進めば郷愁の里五木や,五家の荘の秘郷が静かにねむっている.
熊本県の観光案内をするつもりではない.今,大都会の空気はスモッグに汚れ,マトモに陽の目も拝めない有様.川はにごり,海はヘドロに埋もれ,毎日あふれ出る工場や一般家庭からの廃棄物やゴミに悩まされている.環境甚準がこれでよいのかと騒がれている.新聞もテレビもこのままでは大変なことになると大騒ぎだ.しかし,この汚れた都会の人人の健康がむしばまれ,水も空気もおいしい農村の人人がハチ切れる健康を享受しているというのなら話がわかる.いろいろな統計が教える住民の健康レベルは正に逆となっている.
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