胸部単純撮影でわかる心所見・5
浮腫を主症状とする心疾患
敦本 五郎
1
1淀川キリスト教病院放射線科
pp.1658-1662
発行日 1971年10月10日
Published Date 1971/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203879
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浮腫の発生機序
浮腫は原疾患の種類や臓器によって,心性,腎性,肝性,発生部位により,細胞外浮腫と細胞内浮腫に分けられる.前者は組織間隙に過剰の水分が蓄積した状態をいい,後者は細胞の原形質に過剰の水分が貯留した状態をいう.局所性の中には炎症性のもの,リンパ浮腫,それから血行異常による浮腫の3種類がある.ところで1955年にMachらは,慢性浮腫の中でAldosterone排泄増加を伴うものと伴わない比較的特有な臨床症状をもつ1群の症候群のあることをいい出した.これを特発性浮腫と呼んでいる.その他学童によくみられる生理的のものにねぼけ浮腫がある.
うっ血性心不全における浮腫は,左室不全では肺うっ血症状を,右室不全では静脈系にうっ血を生じた症状を証明するものである.これらの浮腫発生機序の1つにAldosteroneの分泌亢進がある.このAldosteroneの分泌亢進は,腎におけるNa,水の再吸収を促進させる結果,浮腫を発生させることになる.このAldosteroneの分泌を左右するのは腎の傍糸球体細胞から放出されるreninである.レニンは糸球体輸入細動脈壁の弛緩によって亢進し,伸展によって抑制される,したがって,レニン分泌は,Naおよび水分の喪失,腎血流量の減少時に促進され,これが二次的にアルドステロン分泌を刺激することになり,失われたNaや水を体内に貯留するという機構が働いている.
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