臨時増刊特集 身体所見のとり方と診断のすすめ方
●得られた身体所見から診断へ
XIII.消化器系—疾患臓器別にみた局所所見
消化器系—疾患臓器別にみた局所所見
安部井 徹
1
1東邦大第2内科
pp.892-897
発行日 1971年5月20日
Published Date 1971/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203684
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食道疾患と理学的所見
食道疾患は,食道性嚥下困難(Esophageal dy-sphagia)のある患者に疑いをもつ.この嚥下困難は決して食物が食道を通り難いというような明瞭なものだけをさすものではない.食事は難なく通過するが,どこかに軽く当たるというような軽度の感覚や疼痛もさしている.食道疾患を疑わせるもう1つの重要な症状は胸やけ(Heart burn)である.これは胸骨裏面に感ぜられる焼けるような感じをいって.食道が胃酸によって洗われると出現するとされているが,それだけではなく、食道の運動性の変化も関係していると考えられる.
食道疾患を疑うときには,理学的所見は全く無力である,しかしぜひ試みて欲しいのは,聴診による食道通過時間の測定で,外来でも数分で簡単に誰にでも実施でき,しかも疾患の存在診断にはかなり役立つものである.
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