病理夜話
ブレオマイシン
金子 仁
1,2
1国立東京第一病院・病理
2日医大
pp.1714
発行日 1970年11月10日
Published Date 1970/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203411
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人類最後の敵といわれている悪性腫瘍ことに癌に対し,今まで医学者ばかりでなく,多数の学者がその治療に関して研究し続けてきた.しかし依然として,早期発見によりその部を摘出する以外に完治療法はなかった.
長い間,病理解剖をやっていると,癌の恐ろしさが身にしみる.この間も,7年前に胃癌で胃摘出した患者が再発して亡くなった例を剖検したが,残存胃が全く癌に侵され,デコボコになり,さらに噴門部より食道にかけて,ジリジリと癌が,一斉進撃を開始して,食道の中頃まで癌組織に変化している.これが肉眼でハッキリ分るのである.7年前に手術をした外科医に聞いてみたら,「手術時には幽門部に小さい癌があったのみで,少なくとも私は全部切除したと思っておりました.残存胃も食道も全く肉眼的にはきれいだったのです」という.
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