診療メモ
内科領域における心理面の評価(2)—治療法と処置のしかた
遠山 尚孝
1
1九大心療内科
pp.1379
発行日 1970年8月10日
Published Date 1970/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203317
- 有料閲覧
- 文献概要
心理療法の適用 患者の訴えのしかたや病歴,治療経過などから,その症状の成り立ちに心理・社会的な問題の影響が強く認められたときには,患者の心理面により積極的な働きかけが必要である.治療者は,患者の苦しみの内容や,おかれている環境条件を知って不適応を起こしやすい患者の性格傾向を把握し,心理・社会的問題のどの側面に働きかけるかを判断せねばならない.そのためには患者と時間をかけて面接していく以外に方法はない.
ここで胃潰瘍と診断された42歳の男性患者の例をあげてみる.この患者に発病のきっかけになったことやふだんの生活習慣などを聞くとつぎのようなことが判明した.上腹部痛は患者が職場の役付きになって転勤した3カ月めごろから起こりはじめ,新しい職場に移って緊張の連続だったこと,飲酒量はあまり多くないがタバコを日に40本ほど吸い,以前から寝つきが悪かったが最近特に眠れないことなどである.患者は,自分の病気は仕事の疲れからだと思うといい,自信のなさそうな不安げな態度を示した.この患者に,ふつうよくとられるような安静と節煙をすすめ,薬物治療を行なうという処置だけでよいものだろうか?おそらくは仮にこの患者のような心理・社会的な問題があったにしても,患者は1-2カ月の入院期間中に自分の気持ちを整理し,職場を変えるなどして解決をはかっていくにちがいない.
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.