臨時増刊特集 日常役立つ診療技術
診断篇
III.循環器系疾患の診断技術
5.心房ガス造影法
五十嵐 正男
1
,
野辺地 篤郎
2
1聖路加国際病院内科
2聖路加国際病院放射線科
pp.702-705
発行日 1970年5月20日
Published Date 1970/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203120
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原理
心臓陰影の大きい患者をみた場合,ことにその患者が心不全症状を示している時には,その大きい心臓陰影が心臓の肥大や拡張によるものか,それとも心嚢液貯留によるものか,判断がむずかしい場合がしばしばある.その鑑別法について,多くの方法が述べられているが,その中でも最も簡単でしかも信頼性の高いのが,この心房ガス造影法である.この方法は1950年代の前半に発表され,その後半に米国を中心にして普及されてきたものである.
患者を左側臥位に寝せておいて,炭酸ガス50-100mlを急速に肘静脈から注入すると,数秒後にはガスは右心房にたまり,気泡をつくる.そのさい胸部レントゲン写真をとると,炭酸ガスの気泡は右心房内腔の輪郭を示してくれる.この輪郭と心臓陰影の右第2弓の輪郭との間には、心房壁,心嚢および臓器側の胸膜があるが,それらの厚さは全部重ねても3mm以上にはならない.そこで右心房内腔,つまり気泡の輸郭と心臓陰影右第2弓との間の距離が5mm以上あれば,心嚢壁が肥厚しているか,それとも心嚢液が貯溜している可能性が強く,10mm以上あれば確実に心嚢液が貯溜していると診断できる.炭酸ガスは数十秒以内に血液に溶け,肺胞から呼気の中へ出てしまい,ガス栓塞を起こす危険はない.
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