小児心電図講座・2
小児の正常心電図(2)—QRS波
津田 淳一
1
1虎ノ門病院小児科
pp.599-605
発行日 1970年5月10日
Published Date 1970/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203088
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はじめに
QRS波は心室への刺激によりひきおこされた心室興奮のひろがりを示す波とされ,その波形の形成過程を図1に示した.基本的にはP波とおなじく,心室筋興奮を迎える誘導では上向き(R),見送る誘導では初期のQ,RのあとではSとして示される.
したがって,左側誘導からみれば,心室中隔を左から右へ向かう初期興奮はQで示され,ついでみられるRは左心室興奮を,そのあとのSは右室興奮の後期を示すわけである.同様に右側誘導では,心室中隔を左から右への興奮と右室興奮がRで示され,左室興奮はSで示される.したがって左室の十分発達した成人では,左側ではqR,qRs,Rs,右室側ではrSが正常像であるが,前述のごとく,小児期は幼若例ほど,左右の心室比で,成人に比較し右室優勢であり,血行動態的にも肺の拡張不十分などの要素が加わって右室圧と左室圧との比が成人に比べると小さい.その結果は心電図上に忠実に反映し,幼若例ほど成人の基準からすれば右室肥大型が多い.たとえば生後7日間の胸部誘導をみると,V1ではR,Rsが,V5〜6でrS,RSが正常像となっている.この傾向は,生後7日頃最も著しく(理由は未だ不明),以後発育とともに成人型に近づく(図2).
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