EDITORIAL
膵疾患のシンチグラム—将来の方向をさぐる
筧 弘毅
1
1千葉大放射線科
pp.283
発行日 1970年3月10日
Published Date 1970/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203004
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多くの膵疾患のうち,急性および慢性膵炎,膵癌,膵良性腫瘍(膵島腫瘍,膵嚢胞,腺腫,線維腫など)などの場合シンチグラムにどのような変化を与えるか,そしてどの程度の鑑別診断が可能か,また限界はどこかなどを検討する必要がある.われわれの教室で行なった膵スキャンの大略を述べ,将来の方向を概観したい.
膵疾患のうちシンチグラムが最も役だつのは膵癌の診断である.75Se-セレノメチオニンを静注し,数分ないし数時間のうちにスキャナまたはシンチカメラにより膵の正影(positive shadow)を描写する.このさいセレノメチオニンが膵で蛋白に合成され排泄される.癌の場合,主として欠損像によって部位,ひろがりなどを推定できる.たとえば膵の限局性の欠損,一部欠損,膵影の狭小化,輪郭の乱れ,膵の描出の不完全ないし不能などである.乳頭部と膵頭部の癌では頭部の欠損と膵の描記不全として示されるものが半々程度である.体部癌と尾部癌では欠損として示されたり,輪郭の不正ないし変形として示される.膵癌以外でも膵炎,膵嚢胞,総胆管の拡張,他臓器癌の浸潤などにより欠損像またはそれとまぎらわしい像を呈することがある.正常膵でも体部が淡い影となることもある.左腎腫瘍,後腹膜リンパ腺転移などの場合,膵の変形または変位をきたすこともある.
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