診断のポイント
血糖曲線からの糖尿病の診断
日野 佳弘
1
1国立東京第一病院内科
pp.69-72
発行日 1970年1月10日
Published Date 1970/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202941
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複雑になった糖尿病診断
糖尿病に関する新しい知見が加わるにしたがい,糖尿病とは遺伝的素因があり,インスリン作用の減弱,分泌異常などを有し,細小血管症(網膜症・腎症など)を特有な病変とする疾患として把握されてきたが,その定義の1つとして代謝異常とくに糖代謝の病的な変化を示す以上,血糖曲線による糖尿病の診断は重要である.しかしながら糖代謝異常によってわかることは糖尿病状態である.したがってこの異常状態と関係すると思われる他の糖尿病性因子,あるいは糖尿病による病態また糖尿病以外の糖代謝異常をきたす生理学的あるいは病理学的状態,あるいは体質・年齢などを考慮して糖代謝異常を判定し糖尿病の診断をしなければならない.
このような糖尿病診断上の考え方を背景にもちつつ血糖曲線を判定するにあたって,その異常は軽度から高度まで継続的な変化であり,また同一患者でも常に一定の変化を示すとは限らないので,どの一線をもって糖尿病性と診断するかはきわめて人為的であり,かつ困難な問題である.一定の基準の上で集団検診をする場合ならばともかく,患者として治療.健康管理をする立場にある臨床家としては,それぞれの経験,臨床データーに基づいてそれぞれの診断基準をもっている現状であるが,それでもなおかつ糖尿病か否かの診断には継続観察が必要である.
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